コラム

2020年の英語大改革(改悪)という'病'への処方箋【前編】

2020年、いよいよ東京オリンピックと同時に、センター試験廃止に象徴されているように、く読み・書き・話し・聞く>の4拍子そろった資格系の大学入試に英語改革が進んでゆきます。
ここで、猫も杓子も、学校また塾の授業の場でこの“4要素を教えるべき 論”が大勢を占め始めているようです。
ここで、ですが、敢えて、天邪鬼的に、逆説めきますが、だからこそ、週5・6時間という貴重な時間を、前者の”読み・書きに徹底すべき論”をこれから述べさせていただこうかと思います。


|読み・書きに徹底すべき論

3、40年前に比べて、英語教師の発音、英会話能力は、若干はよくなって来てはいるようですが、生徒自身のそれは、その比ではありません。
数段ましになってきてはいます。
これは、ひとえに、学校英語教育の場によるものではなく、社会、即ち、英語メディアや 語学ツールが格段に進歩し、そして生徒の身近になってきたことが原因として挙げられるでしょう。
10年以上前に、パソコンスクールなるものが巷で隆盛を極めましたが、学校でパソコンの時間が設けられたことで、その親の世代(現場の教師に比喩できなくもない}は、我が子にその“教師”となってもらい、自宅でなんとかパソコンの基礎を習得し、今ではパソコンスクールがほとんど見かけなくなりました。
それには、勿論、スマホの存在も欠かせません。
しかし、ここで言いたいことは、演習による技能、いわば、話したり、聴いたりするスキルは、たかだか、教室の場、それも週数時間ではものにはならないという現実と似たものがあるということなのです。

今では、英語参考書の類の本は、たいてい、CDか、音声がパソコンでダウンロードできるシリアルナンバーがおまけでついてきます。
また、現代は、スマホ、パソコン、CD プレーヤー、i-Pod など、英語を学ぶツールに事欠きません。
インターネットによる英会話スクール、AIを内蔵した英会話ロボットまで登場する世の中です。
これほど、自助努力で、リスニングやスピーキング、音読やシャドーイングを行える好環境は、以前には存在 しませんでした。
また、英語参考書、特に、大学受験をターゲットにした本も、ここ2、30年、断然詳しく、見やすく、わかり易く、従来では、触れられなかった文法事項など、数段に質が上昇しているというのが実態です。
私の受験の頃(昭和でありますが)、「ああ、こんな参考書、問題集があったらなあ」と思うような良書が多数出版されています。
しかし、現実は、それに比例して、文法力・読解力が果たして上がっているのかといえば、はなはだ疑問と言わざるを得ない。
私は、20年以上個人で大学受験を対象とした英語塾を主宰しているので、“臨床医”的に肌で実感するのです。
これは、大手の予備校講師や、私立の進学校で教鞭をとっておられるヴェテランの英語教師の方に尋ねてみても同様の意見がかえってくることは自信をもって言えます。


|英語参考書の質の向上と高校生の英語能力の低下の因果関係

では、この英語参考書の質の向上と高校生の英語能力(読み・書きという従来の文法読解の側面)の低下の因果関係はどこにあるのでありましょうか?
私は、大学の、それも教育学部系の教授でもないので、そのデータや資料は持ち合わせてはいませんが、仮説だけは、言えます。
端折って言えば、受験競争の苛烈さの低下(少子化により浪人数の減少)、 また、それに引きずられた推薦系による入学者の激増、デジタル化社会・映像化社会による読解力の低下(読書離れ)などが、”いいこと・いい内容・すぐれた解説・すぐれた切りロ”、こういった英語のツボなることに、その参考書を読んでも生徒自身が気づかない、深く理解できないということが、まず挙げられるかと思います。
これほど、優れた英語参考書・問題集・単語集なるものが書店の棚を賑わせている世の中でありながらも、東進ハイスクールの映像授業や、スマホの見放題サプリ授業、ブロードバンド予備校、巷に跋扈するフランチャイズ形式の個別授業教室など、教育産業が栄える理由は、独学で良書、すばらしい参考書を習得できない資質・気質に原因があるように思えてなりません。

学校という場が、く読み・書き・話し・聞く>という一種、何でも屋さんの場に墜している。
く読み・書き>は、放課後の塾・予備校という道場で鍛えた者のみが、学校のペーパーテストでよい点数をゲットする。
そんな文法・読解など学校という場では、教授できない現実がある。
集団形式と文科省の方針でそうならざるをえない。
<話し・聞く>など、 ごっこ的、なーんちゃって英会話で、間違ってもいい、どしどし英語を話そう的雰囲気では、一向に<話し・聞く>スキルの向上など望むべくもない。
これが、学校、特に、公立の中学高校の実体ではないかと思うのです。


続きは2020年の英語大改革(改悪)という'病'への処方箋【中編】をご覧ください。


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