コラム

子ども携帯を持つS君からS・ジョブスを想う

 私の教え子で、現在中学3年生の男子生徒がいます。神奈川県の進学校に通っている、サッカーに没頭している、英語は学校でも上位にいる生徒です。彼は、中学2年の半ばまで、小学校の延長である<子供ケータイ>なるものを所持していました。親としか連絡できない代物です。丁度中1の後半だっただろうか、「S君、もう中学生でスマホはもっているの?」と訊くと、「いや、これです」と、緑色の楕円形の、よくランドセルのわきのぶら下げておく、いわゆる、<子供ケータイ>なるものをカバンから取り出して見せてくれました。「スマホなんか、欲しくないの?」と尋ねると、「別に…」と全くそんな文明の利器には無頓着の表情で答えるではないか。「友達にバカにされない?」と訊く、すると「まあ、だけど気にならない!」と応じてきた。そのS君は、中学2年の後半に、「これ先生と同じやつ、ガラ携じゃなくガラホに変えたよ」と授業の合間に、それを見せてくれた。私もその年、ガラ携からガラホに機種を変更したが、二つ折りの型は、ガラ携と見た目は全く変わらない。「S君、スマホじゃなく、先生と同じガラ携(本当はガラホ)に進化したのか」とにっこりと握手をした。
 
 このS君は、小学校からサッカーのクラブチームに所属し、中学1年まで在籍して、その年の夏休みスペインのサッカー合宿にまでおもむくサッカー小僧でもある。無論、学校ではサッカー部である。その彼は、教えていて気付くのだが、地頭はいい、しかし、デジタルの資質が感じられないのである。いや、潜在的に持っているかもしれないが、現段階では、こてこてのアナログ少年である。サッカーというスポーツに没頭し、ゲームやパソコンも自宅では全く疎遠な生活をしているそうである。一向にそういうデジタル系には関心がない。一方、授業の30分前など、早めに教室に入ると、たいていの生徒はスマホを眺めて時間を過ごしたりしているが、彼は、文庫本で読書に時間を費やしているではないか。
 
 スマホやゲームに興味なし、サッカーというスポーツに熱中する、しかも、勉強や部活の合間は、読書に明け暮れている。そうだ、このタイプは、高校球児やサッカー少年に共通する、最小公倍数的“希少価値ある”存在やもしれぬと、確信した。高校時代の、中日に入団した根尾にしろ、日ハムからメジャーへと雄飛した大谷にしろ、このタイプだっただろうと想像に難くない。この両者には、未成年ながら、アスリートとしての“オーラ”が漂ってもいた。
 
 この教え子のS君は、彼の友人から見ると、「超信じられない!」と奇異に思われていることであろう。令和の時代、中学生にもなって、子供携帯を中2まで所持するなんて他の教え子に話すと「考えられない~!」と返ってくる。そうである。一般的に、小学生時代は、ガラ携帯、そして中学生になると、今や、制限つきながらスマホの時代である。しかし、私も今もってガラホ派である。スマホのアプリなどこの日本にいて現段階では不要である。電子マネーは勿論、ネットでモノを購入したことすらない。ましてや、メルカリなどで不要なモノを売りさばいたこともない。このデジタルの趨勢の中、アナログでいることで、ある意味、スマホ派にはわからないであろうが、日々の心の安寧とやらに浸ってもいられる。
 
 あのスティーブ・ジョブズの名言「Stay hungry. Stay foolish.」を我流に解釈すると、教え子のS君と私自身をファーマットとして、我田引水的ながら、以下のようなことが無意識にプリンシプルになってもいるようだ。
 
 Stay alone. Stay behind the times. (つるむな!時代と寝るな!)


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