コラム
藤井聡太の強さとは?➁
竜王戦、豊島将之を4連勝で下した藤井聡太四冠誕生のドキュメント番組NHK特集「四冠誕生 藤井聡太 激闘200時間」での発言である。藤井自身や、羽生善治9段ものは、敢えて割愛した。周囲で、藤井を見つめ続けてきたプロ棋士たちの感想である。
【谷川浩司9段】
三つ手を考えたとしても指せるのは一手だけなんですね。残りの2つは指さないわけですが。実際に選んで指した手は指した瞬間、対局相手はもちろん全棋士にとっての共通の情報となるわけです。指さなかった手は、対局者だけ本人だけがわかるものなんですね。指さなかった手の読み筋、読みの深さ、そういうことの積み重ねが非常に大きいのではないかと。答えが出ない局面に取り組むのはなかなか苦しい作業でもありますが、藤井さんにとっては、それが逆に楽しいことなのかもしれません。
※これは樂茶碗の名器を窯から出して、数百、数千も常人にはうかがい知れないほど破棄してしまう、その自身の求める理想の黒茶碗を追い求める樂家の代々の陶工の精神すら彷彿とさせる。
【谷川浩司9段】
強くなってゆくにしたがって感じるのは、対局というのは、決してひとりでできるものではなくて、ふたりで差し手をつないでいくもので、“棋は対話”という言葉がありますが、私も羽生さんと160局以上公式戦で戦って、最初はなかなかそうはいかったですが、中盤以降からは純粋に将棋盤だけに集中できる関係になれたと思っていますので、豊島さんと藤井さんもそういう関係になりつつあるのかなと感じまして…。
※これは、アントニオ猪木が、様々なレスラーと一番名勝負をしてきた、その対戦を想起させる。恐らく、日本のプロレスラーで一番の名レスラーを挙げれば、アントニオ猪木を置いて他にはない。「猪木は、箒とも名勝負が演じられる」
【畠山鎮8段】
さっきまでくたくたに疲れていた藤井さんが“え?それで受かってるんですか?(大丈夫なんですか?)”って目がらんらんと輝いて、なんか宝石でも見つけたような目で“じゃあ、この変化はこうなったらどうなんですか、教えてください”と前に座って、こっちは新聞解説なのに、こっちがへとへとになって、対局した藤井さんが目がらんらんと輝いて「この手は、この手は」と。将棋の盤上の中の手はもうとてつもない数があって、藤井さんの中では星のように、あんな真っ暗な銀河にもきれいな星々がいっぱいあるよといっても、いまの自分ではそのきれいなものを見られない、取り出せない、みんなに見せてあげられないということに悔しさをおぼえているのかなと。
※これは、東京国際マラソンや福岡国際マラソンで優勝した翌日、神宮外苑を、師中村清が見つめる中、40キロランニングしていた瀬古利彦のルーティンを思い起こさせる。
【豊島将之】
タイトル取るまで苦労したのですが、最後の方は、タイトル一個取れればいやみたいな感じになっていたので、タイトル以外の目標があまりなかったので、一個タイトル取るかどうかで相当苦戦しましたから。
~そんな時、藤井が現れた~
藤井さんは自分が見たこともないような(デビューから)29連勝もそうですが、詰め将棋の速さとか差している将棋の内容も、当時はタイトルとかではなかったですが、年齢にして、その将棋の内容はすごい驚異的なものがあったので、本当に将来すごいレベルの、これまでにいなかったようなレベルの棋士になるのかなと感じていたので、5年後、10年後、彼が一番強くなるであろう時に戦いたい、そんなに長く活躍したいと思っていなかったけれど、彼がいるのでやっぱり戦いたい
※これは、長嶋茂雄がいたから燃えた村山実、王貞治を終生のライバルとしていた江夏豊、稲生和久をどう打ち崩せるかと思案して成長していった野村克也、こうした野球界のライバル関係を連想させもする。
谷川、畠山、そして豊島といったそうそうたる棋士をして、以上のように語らしめる、その藤井聡太という棋界での存在、それがどれほどのものであるか、お分かりいただけよう。
【谷川浩司9段】
三つ手を考えたとしても指せるのは一手だけなんですね。残りの2つは指さないわけですが。実際に選んで指した手は指した瞬間、対局相手はもちろん全棋士にとっての共通の情報となるわけです。指さなかった手は、対局者だけ本人だけがわかるものなんですね。指さなかった手の読み筋、読みの深さ、そういうことの積み重ねが非常に大きいのではないかと。答えが出ない局面に取り組むのはなかなか苦しい作業でもありますが、藤井さんにとっては、それが逆に楽しいことなのかもしれません。
※これは樂茶碗の名器を窯から出して、数百、数千も常人にはうかがい知れないほど破棄してしまう、その自身の求める理想の黒茶碗を追い求める樂家の代々の陶工の精神すら彷彿とさせる。
【谷川浩司9段】
強くなってゆくにしたがって感じるのは、対局というのは、決してひとりでできるものではなくて、ふたりで差し手をつないでいくもので、“棋は対話”という言葉がありますが、私も羽生さんと160局以上公式戦で戦って、最初はなかなかそうはいかったですが、中盤以降からは純粋に将棋盤だけに集中できる関係になれたと思っていますので、豊島さんと藤井さんもそういう関係になりつつあるのかなと感じまして…。
※これは、アントニオ猪木が、様々なレスラーと一番名勝負をしてきた、その対戦を想起させる。恐らく、日本のプロレスラーで一番の名レスラーを挙げれば、アントニオ猪木を置いて他にはない。「猪木は、箒とも名勝負が演じられる」
【畠山鎮8段】
さっきまでくたくたに疲れていた藤井さんが“え?それで受かってるんですか?(大丈夫なんですか?)”って目がらんらんと輝いて、なんか宝石でも見つけたような目で“じゃあ、この変化はこうなったらどうなんですか、教えてください”と前に座って、こっちは新聞解説なのに、こっちがへとへとになって、対局した藤井さんが目がらんらんと輝いて「この手は、この手は」と。将棋の盤上の中の手はもうとてつもない数があって、藤井さんの中では星のように、あんな真っ暗な銀河にもきれいな星々がいっぱいあるよといっても、いまの自分ではそのきれいなものを見られない、取り出せない、みんなに見せてあげられないということに悔しさをおぼえているのかなと。
※これは、東京国際マラソンや福岡国際マラソンで優勝した翌日、神宮外苑を、師中村清が見つめる中、40キロランニングしていた瀬古利彦のルーティンを思い起こさせる。
【豊島将之】
タイトル取るまで苦労したのですが、最後の方は、タイトル一個取れればいやみたいな感じになっていたので、タイトル以外の目標があまりなかったので、一個タイトル取るかどうかで相当苦戦しましたから。
~そんな時、藤井が現れた~
藤井さんは自分が見たこともないような(デビューから)29連勝もそうですが、詰め将棋の速さとか差している将棋の内容も、当時はタイトルとかではなかったですが、年齢にして、その将棋の内容はすごい驚異的なものがあったので、本当に将来すごいレベルの、これまでにいなかったようなレベルの棋士になるのかなと感じていたので、5年後、10年後、彼が一番強くなるであろう時に戦いたい、そんなに長く活躍したいと思っていなかったけれど、彼がいるのでやっぱり戦いたい
※これは、長嶋茂雄がいたから燃えた村山実、王貞治を終生のライバルとしていた江夏豊、稲生和久をどう打ち崩せるかと思案して成長していった野村克也、こうした野球界のライバル関係を連想させもする。
谷川、畠山、そして豊島といったそうそうたる棋士をして、以上のように語らしめる、その藤井聡太という棋界での存在、それがどれほどのものであるか、お分かりいただけよう。