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コラム
鈍感力と政治家
「人間の最大の悪は何か?それは鈍感である」(野村克也)
ひと昔前、渡辺淳一の『鈍感力』という本がベストセラーになった。時は同じくして小泉純一郎の時代である。小泉構造改革の旗振りの最中、彼は鈍感力という言葉をよく引用して、郵政改革選挙の際は「自民党をぶっ壊す!」と絶叫してもいた。実は、「田中派をぶっ壊す!」が真意でもあったようである。自身の恩師福田赳夫の敵田中角栄への復讐でもあった。
それに対して名将野村克也氏は、そうした風潮とは一切関係ない次元で、鈍感とは悪であるとまで言い切っている。
当代きっての売れっ子作家と大衆の支持を基盤とした首相、そして、野球の名監督が鈍感について真逆の見解を述べていたことが、面白いことであった。この面白いを、深堀りすると興味深い側面が浮かび上がってもくる。政治家という人種の分析のヒントともなる。
今では懐かしい第一次安倍内閣、参議院選挙で大敗北をくらい、自身の持病もあいまって退陣を余儀なくされた。これは、私流に言わせてもらうならば、鈍感力のなさが大いにある。その一方、麻生首相が退陣した大きな要因は、鈍感力の過剰さが原因である。今でも鉄面皮の政治家である。どうも尊敬する祖父吉田茂を、真似ている嫌いがなくもない。あの時代だったから大磯のドンは、あのキャラで通用したのである。チャーチルと同様である。かつて政治記者が吉田に「長生きの秘訣は?」と聞かれ、ブラックユーモアか知らないが「人を食っているからだ!」と応じたが、第二次安倍内閣で仲良し3人組の安倍・麻生・菅で一番年長で、矍鑠として、若々しく見えるのがこの麻生太郎でもある。まさに、鈍感力の権化でもある。因に、政治家とは、国民のために“悪”を行える人種ともまんざら言えなくもない。この“悪”には、鈍化力がつきものである。しかし、麻生太郎の鈍感力は、この文脈から相当にズレることは指摘しておこう。
では、あの小泉純一郎は、鈍感力で小泉構造改革を行ったのであろうか?いや、それは、違う。彼は郵政民営化を問うた解散には、相当な敏感力があったはずである。政局への嗅覚というものである。その繊細さに鈍感力の鎧を着せて、自身の抵抗勢力を排除していったのである。小泉純一郎の敏感力は、料亭よりもオペラを選ぶ変人ぶりから一見鈍化力と見まごうが、実は、近年反原発へと態度を鮮明にしたことからも、その敏感さが露見した証拠でもある。彼の首相時代の気質は、確信犯的鈍感力とでも言える。これは、第一次安倍政権にはなかった。その虚を突かれて政権を放り投げ、短命の福田康夫、麻生太郎、そして民主党政権となったのである。これが教訓ともなり、第二次安倍政権が誕生した。失敗に学んだ“勝者”ともなった。しかし、そのデリカシーの資質は、なくなりはしない。ここで、内閣人事局を設置した。この機関が、敏感に見える“脆さ”という安倍自身の気質に鈍化力という“仮面”をかぶせた形である。それが、見た目“マッチョ”安倍総理に忖度する霞が関風土をつくる原因ともなった。文書改竄・文書破棄などである。もし、この公文書に手を加える官僚の行為がなければ、安倍政権は、数年で終わっていたかもしれない。<森・加計・桜>関連のどれかが原因で倒れていたはずである。国民の民主党政権へのトラウマと安倍自身の持病持ち、敢えて、ヤワ政治家気質と申しあげよう、それに<仮面をかぶせた姿>へ忖度官僚が長期政権を下支えしたのである。尊敬する祖父岸信介の、鈍感力とも違った“図太さ”を演じてもいたのであろう。しかし、メンタルの弱さは馬脚を現すものである。もう鈍感力の仮面をつけてはいられなくなったのであう。そう、相棒のトランプ大統領が、どうも再選されない見通しを感づいたのかもしれない。このトランプ氏は、麻生太郎の上を行く鈍感力のカリスマである。このゴルフ友達の親友から政敵バイデン氏にアメリカ大統領がなったら、どうも旗色が悪い、最長期政権の名誉に浴した段階で、持病を理由に、さっさと退陣した方が得策と判断したのが事の顛末であると思えてならないのである。もちろんコロナ禍がさらに後押しをしたのは言わずもがなである。マッチョ的判断、ええかっこしいの独断、その典型が<2月末の休校要請>である。その後、コロナ対策で、自身のメンタルを追い込んでいった。
繊細さとヤワさは違う。鎧と仮面も違う。辞書的意味では、鈍感の反対語は敏感でもあるだろうが、それを人生や仕事の側面ではあてはめられない事例が、小泉、麻生、安倍という政治家をファーマットとすると浮かび上がってもくる。
鈍感力、これを、伝言ゲーム風に翻訳していくとすると、楽観力、強いては、ポジティブシンキングとやらに行き着く。これは個人レベルの人生処世術としてである。これを公人でもある政治家に適用するには不似合いである。ましてや、野球という組織ゲーム、また自身のスキルアップが求められる会社やチームで適用しようなどとは、牽強付会も甚だしいといわざるを得ない。この点、流行語大賞ともなった鈍感力という言葉に、偏屈名監督が、異議を唱えた形である。いや、この鈍感力ブーム以前から野村克也という人間は、鈍感の負の側面を指摘していた。
気象予報士の森田正光さんは、あるテレビ番組で、ビートルズの“Let it be”をアニメ“天才バカボン”のバカボンパパの名言“これでいいのだ!”と訳すとピッタリするとも語っていた。興味深い指摘である。
鈍感力、これも流行作家が書籍の題名にし、時の人気総理が引用する、だからブームともなった。鈍感力、どうってことはない、楽観力、ポジティブシンキングをキャッチーに語ったに過ぎない。それに天の邪鬼名伯楽が、嫌みという冷や水をぶっかけたのである。いや、それに異議など申し立ててはいなかった。その齟齬をここで取り上げたのは、私の気まぐれでもある。
へそ曲がりは{長嶋やイチローを知的に批判する目線}、時流に流される大衆には必要な異分子でもある。「へそ曲がりはあらまほしきものなり」である。
ひと昔前、渡辺淳一の『鈍感力』という本がベストセラーになった。時は同じくして小泉純一郎の時代である。小泉構造改革の旗振りの最中、彼は鈍感力という言葉をよく引用して、郵政改革選挙の際は「自民党をぶっ壊す!」と絶叫してもいた。実は、「田中派をぶっ壊す!」が真意でもあったようである。自身の恩師福田赳夫の敵田中角栄への復讐でもあった。
それに対して名将野村克也氏は、そうした風潮とは一切関係ない次元で、鈍感とは悪であるとまで言い切っている。
当代きっての売れっ子作家と大衆の支持を基盤とした首相、そして、野球の名監督が鈍感について真逆の見解を述べていたことが、面白いことであった。この面白いを、深堀りすると興味深い側面が浮かび上がってもくる。政治家という人種の分析のヒントともなる。
今では懐かしい第一次安倍内閣、参議院選挙で大敗北をくらい、自身の持病もあいまって退陣を余儀なくされた。これは、私流に言わせてもらうならば、鈍感力のなさが大いにある。その一方、麻生首相が退陣した大きな要因は、鈍感力の過剰さが原因である。今でも鉄面皮の政治家である。どうも尊敬する祖父吉田茂を、真似ている嫌いがなくもない。あの時代だったから大磯のドンは、あのキャラで通用したのである。チャーチルと同様である。かつて政治記者が吉田に「長生きの秘訣は?」と聞かれ、ブラックユーモアか知らないが「人を食っているからだ!」と応じたが、第二次安倍内閣で仲良し3人組の安倍・麻生・菅で一番年長で、矍鑠として、若々しく見えるのがこの麻生太郎でもある。まさに、鈍感力の権化でもある。因に、政治家とは、国民のために“悪”を行える人種ともまんざら言えなくもない。この“悪”には、鈍化力がつきものである。しかし、麻生太郎の鈍感力は、この文脈から相当にズレることは指摘しておこう。
では、あの小泉純一郎は、鈍感力で小泉構造改革を行ったのであろうか?いや、それは、違う。彼は郵政民営化を問うた解散には、相当な敏感力があったはずである。政局への嗅覚というものである。その繊細さに鈍感力の鎧を着せて、自身の抵抗勢力を排除していったのである。小泉純一郎の敏感力は、料亭よりもオペラを選ぶ変人ぶりから一見鈍化力と見まごうが、実は、近年反原発へと態度を鮮明にしたことからも、その敏感さが露見した証拠でもある。彼の首相時代の気質は、確信犯的鈍感力とでも言える。これは、第一次安倍政権にはなかった。その虚を突かれて政権を放り投げ、短命の福田康夫、麻生太郎、そして民主党政権となったのである。これが教訓ともなり、第二次安倍政権が誕生した。失敗に学んだ“勝者”ともなった。しかし、そのデリカシーの資質は、なくなりはしない。ここで、内閣人事局を設置した。この機関が、敏感に見える“脆さ”という安倍自身の気質に鈍化力という“仮面”をかぶせた形である。それが、見た目“マッチョ”安倍総理に忖度する霞が関風土をつくる原因ともなった。文書改竄・文書破棄などである。もし、この公文書に手を加える官僚の行為がなければ、安倍政権は、数年で終わっていたかもしれない。<森・加計・桜>関連のどれかが原因で倒れていたはずである。国民の民主党政権へのトラウマと安倍自身の持病持ち、敢えて、ヤワ政治家気質と申しあげよう、それに<仮面をかぶせた姿>へ忖度官僚が長期政権を下支えしたのである。尊敬する祖父岸信介の、鈍感力とも違った“図太さ”を演じてもいたのであろう。しかし、メンタルの弱さは馬脚を現すものである。もう鈍感力の仮面をつけてはいられなくなったのであう。そう、相棒のトランプ大統領が、どうも再選されない見通しを感づいたのかもしれない。このトランプ氏は、麻生太郎の上を行く鈍感力のカリスマである。このゴルフ友達の親友から政敵バイデン氏にアメリカ大統領がなったら、どうも旗色が悪い、最長期政権の名誉に浴した段階で、持病を理由に、さっさと退陣した方が得策と判断したのが事の顛末であると思えてならないのである。もちろんコロナ禍がさらに後押しをしたのは言わずもがなである。マッチョ的判断、ええかっこしいの独断、その典型が<2月末の休校要請>である。その後、コロナ対策で、自身のメンタルを追い込んでいった。
繊細さとヤワさは違う。鎧と仮面も違う。辞書的意味では、鈍感の反対語は敏感でもあるだろうが、それを人生や仕事の側面ではあてはめられない事例が、小泉、麻生、安倍という政治家をファーマットとすると浮かび上がってもくる。
鈍感力、これを、伝言ゲーム風に翻訳していくとすると、楽観力、強いては、ポジティブシンキングとやらに行き着く。これは個人レベルの人生処世術としてである。これを公人でもある政治家に適用するには不似合いである。ましてや、野球という組織ゲーム、また自身のスキルアップが求められる会社やチームで適用しようなどとは、牽強付会も甚だしいといわざるを得ない。この点、流行語大賞ともなった鈍感力という言葉に、偏屈名監督が、異議を唱えた形である。いや、この鈍感力ブーム以前から野村克也という人間は、鈍感の負の側面を指摘していた。
気象予報士の森田正光さんは、あるテレビ番組で、ビートルズの“Let it be”をアニメ“天才バカボン”のバカボンパパの名言“これでいいのだ!”と訳すとピッタリするとも語っていた。興味深い指摘である。
鈍感力、これも流行作家が書籍の題名にし、時の人気総理が引用する、だからブームともなった。鈍感力、どうってことはない、楽観力、ポジティブシンキングをキャッチーに語ったに過ぎない。それに天の邪鬼名伯楽が、嫌みという冷や水をぶっかけたのである。いや、それに異議など申し立ててはいなかった。その齟齬をここで取り上げたのは、私の気まぐれでもある。
へそ曲がりは{長嶋やイチローを知的に批判する目線}、時流に流される大衆には必要な異分子でもある。「へそ曲がりはあらまほしきものなり」である。
2020年12月14日 16:53