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総合型入試(旧AO)の実体は?

 7月11日号の週刊誌『アエラ』の特集である。テーマは、‘大学入試のいま’と題して、巻頭特集の内容に関してである。いかにも、40~50代の中高生をお持ちのご父兄に、スケベ根性を芽生えさせる特集である。以下は、本記事のヘッドラインである。
 
 総合型を制する者は、入試を制す
 伸びしろ重視で様変わり 大学入試の現在地
 AO入試組のほうが入学後の成績が伸びる
 
 私が敢えて、言いたいことは、以下の様な感想である
 
 総合型は、‘貴族’の入試
 一般入試は、‘武士’の入試
 
 2016年に始まった、東大入試で、学校推薦型選抜を導入した際、昼行燈的秀才だが、東大には学力的にいまいちの高校生に、淡き夢を抱かせた事例が記憶に新しい。この東大の推薦枠とやらは、センター試験は、当然8割以上といいながら、挑む母集団は、当然ながら9割前後の高得点をゲットしていて、ましてや、数学オリンピックや、様々な技能コンテストで入賞または、一芸を有している猛者どもたちが、その学校一枠(一人)を巡り、100名という狭き門を突破している様を実感し、「こんな難しいなら、一般入試の方か楽、マシだ!」と分をわきまえて、さっさと選択肢を切り替えた高校生がどれほどいたことだろうか。これは、灘校であれ、開成高校であれ、筑駒であれ、真実であり、実態でもあるのは現場の教師なら当然認識してもいる事実である。
 
 今回の『アエラ』の記事の内容を読んでみると、その、東大推薦制度の《縮小版》に過ぎぬと実感されもした。東北大が、この綜合型に一番成功している国立大学らしいが、学力的に、その成績が担保されての上で、面接など本人見極め審査というフィルターを通して入学してくるのであるから、当然ながら、学生の品質保証体制は万全である。つまり、大学入学の動機と学業研究の強い意志の保証書やらである。当たり前ながら、入学後に成績が伸びるのは必然である。
 
 MARCHレベルの総合型で入学してくる学生も、学力を一次審査で、チェックするフィルターが待ち構えてもいる。ここが、味噌である。分岐点でもある。つまりは、MARCH以下のレベルの大学で、総合型入試を行っても、平成前期で大流行りした、けん玉入試、芸能人枠入試などになれ下がるということである。“学力なくても、ピカッと光る特技・魅力さえあれば、合格させてあげるよ”のシステムのことである
 
 この『アエラ』の特集では、MARCHレベル以下の大学の総合型は、登場してこない。
 この総合型の入試というものは、真の意味でという前提を介して申しあげれば、学力の担保が必要条件、そして、入学前の動機、入学後の研究課題などが十分条件として考慮される。しかし、大方凡庸な資質ながら、異常に高い夢を抱く高校生{※自身は外見がブサイクで、性格もイマイチ、頭は大したことがないにもかかわらず、イケメンで、高学歴で、いい家出身の彼氏をゲットするために、化粧やら、美容整形やら、ぶりっ子までして結婚しょうとする女子、その逆もある}、つまりは、勉強が好きではない、基礎学力がいまいちながら、高望みする高校生に、淡き夢を抱かせるシステム、これが令和の、総合型の入試システムといってもいい。
 
 W塾のSFC対策講座に、弊塾でもダブル塾派として、通う高校生が存在していたが、英語が全くできない女子ばかりであった。英語ができないなら、‘裏口入学’・‘入学詐欺’とまでは言えないが、大学当局を、どう騙して合格するか、その書類動機の書き方を高額で指導するルートである。英語興味なし、やってもできない、それなら、AO枠のSFCに入ろうとする姑息な魂胆の高校が、どれほどいることだろう。勉強はできないが、入ってから猛勉強しますと宣言している書類動機などを目にすると、昭和の時代、お見合い結婚で、いかにいい家柄のお坊ちゃんと結婚できるか、そのお見合い斡旋おばちゃんの指導のハウツーに、このW塾の講座がダブって見えてもくる。
 いわば、令和の総合型入試に挑みたがる高校生の気質は、このW塾に大枚をはたいて通う女子高生と似たりよったりが現実でもあろう。
 
 大学当局も、高等教育でやる気のある学生を取りたい、大学で目標を持つ高校生を選抜したい、将来大手企業で活躍してくれる、また、ベンチャー企業を立ち上げるような資質を有する学生を取りたい、アドミッション・オフィスの彼らの夢も崇高である。しかし、こうした崇高なる考えを持つ大学も、その眼鏡に適う学生は、極少数といわざるをえない。そうした伸びしろのある高校が少ないのは、今の大学生で、将来出世したいとか、社長になりたいとか、そうした立身出世の高邁なる精神が、OECD諸国の中で一番テンションが低いといった、日本のZ世代の気質を鑑みれば、納得もゆく。留学の意志もアジアで日本が一番低いことも、それと同類の気質を表してもいよう。
 将来、課長や部長といった責任ある役職に就くよりも、現状の、そこそこの役職にとどまっていたいとする20代の社会人気質が、高校時代、クソおもしくもない英数国社理を勉強し、高校の延長線上のメンタルで、キャンパスに足繁く通い、レポート提出があるからそれを処理し、単位をもらい卒業してゆく大学生に、総合型で求められるメンタルを期待するのは、冷房の効いた室内にいる小型犬を、猛暑の夏、屋外に散歩に連れ出すようなものである。
 この雑誌『アエラ』の特集、お父さん連中への、ぼんくら我が子への淡い期待・夢を抱かせる特集といってもいい。この雑誌、読んでいる高校生は、日本では、皆無でもあろうからだ。ビジネス誌{プレジデント・東洋経済・エコノミストなど}がよく、社会人向けに巻頭を飾る《英語特集》と似た企画ものである。世の中の、成功事例・いい面のみを挙げて、大衆に夢を抱かせる、その魂胆は、部数をあげることでもある。

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